クリエイター 建築 日常

ものづくりをすることの喜び

コンクリート型枠が外れ、上階スラブを支えるサポートとが外されると空間が顕在化する。思考が実体化されたこの瞬間は、日常の中ではなかなか味わえない異様な感覚となって私の五感を襲撃する。自然光だけで照らされたその空っぽの空間は、その異様さを助長する。

机上と実状では、人間が知覚する情報量に圧倒的な差がある。我々は建物を設計する際、申請、行政対応、建設、竣工、運用、廃棄、そしてその次の時代へ、その土地や図面が今後担うであろう数百年を見越して思考を巡らす。その思考は一本一本の線となって表現され、この世界に現れる。

コンクリートという実体にはそれらの思考がポテンシャルとして内在されている。今まではそこになかったものが大量の情報を携えて突如として顕在化する。その瞬間に立ち会うと想像以上の情報が荒波のように襲ってくる。それは恐ろしくもあり、心地よくもあり、また希望でもある。

意図された空間が意図された通りに実体を成すと安心する。想像を超えて五感を震わす空間が現れると希望が湧く。それらの刺激は、より良いものとなって現場に活力を与え、さらにより良いものとなって完成を迎える。

ものづくりは思考の連続である。それは自分と向き合う時間でもある。自分を除く全てと向き合う時間でもある。様々な情報が、一本の線を描こうとする私の手の邪魔をする。それでもなお思考を繰り返し、やっとのことで一本の線を紙に描く。小さな芽は次への希望となって私の思考を加速させる。

より良いものをつくる為に、今日も思考を繰り返す。

コメントを残す